結論:源泉徴収「だけ」では終わらない。多くの医師に追納が来る
常勤先のほかに非常勤・スポットのバイトをしている医師が確定申告をすると、「バイト先でちゃんと天引きされていたのに、さらに追納?」と驚くケースが非常に多くあります。
理由はシンプルです。バイト先で天引きされた源泉徴収額は“仮の概算”にすぎず、あなたの本当の税率(限界税率)で計算し直すと、多くの場合足りないからです。
この記事では、その仕組みを最後まで分解します。自分の実額(追納になるのか、還付になるのか)は、記事末尾の無料シミュレーターで計算できます。
なぜバイトの源泉徴収では足りないのか
ポイントは「年末調整は1か所でしかできない」という点です。
- 常勤先:年末調整で、その1か所分の税額はきちんと精算されます。
- バイト先:そこはあなたにとって「2か所目以降」。バイト先はあなたの全体の所得を知らないまま、概算で源泉徴収しています。
つまり、全収入を合算して初めて“正しい税額”が出るのが確定申告です。源泉が本来の税額より少なければ追納、多ければ還付になります。
なお、2か所目以降の給与や、給与以外の所得が一定額(目安として年20万円)を超える医師は、確定申告が原則必要です。
バイトには2タイプある:「給与扱い」と「報酬扱い」
ここは見落とされがちですが、税金のかかり方が変わる重要な分岐です。
① 給与扱い(非常勤勤務など)
給与として「乙欄」で源泉徴収されます。乙欄は本来やや高めに引かれる設計ですが、それでもあなたの限界税率には届かないことが多く、合算すると不足しがちです。
② 報酬扱い(業務委託・講演・原稿など)
報酬として、原則10.21%(所得税10%+復興特別所得税2.1%)が源泉徴収されます(1回の支払のうち100万円を超える部分は20.42%)。経費を差し引ける利点がある一方、10.21%という率は、医師の限界税率よりずっと低いのが普通です。
→ どちらのタイプも「源泉徴収率 < 本来の税率」になりやすい。これが追納の温床です。
追納の正体:累進課税の「限界税率」
ここが核心です。所得税は累進課税で、課税所得が積み上がるほど、上に乗った所得には高い税率がかかります。
所得税率(課税所得の帯ごと・抜粋):
| 課税所得 | 所得税率 |
|---|---|
| 695万〜900万円 | 23% |
| 900万〜1,800万円 | 33% |
| 1,800万〜4,000万円 | 40% |
これに**住民税 約10%と復興特別所得税(所得税額の2.1%)**が加わります。
例(仕組みを示すための概算)
すでに常勤で課税所得が900万円台(所得税33%の帯)に達している医師が、給与扱いの非常勤バイトで年100万円を得たとします。医師のバイトで最も多いパターンです。
- バイト先は「乙欄」で源泉徴収します。乙欄は2か所目の給与向けにやや高めに引く設計ですが、それでも高所得帯の限界税率には届かないことが多く、しかも源泉で引かれるのは所得税だけです。
- この100万円を確定申告で合算すると、所得税33%の帯に乗ります → 本来の所得税は約33万円。
- これに住民税 約10万円(100万円 × 約10%)が加わり、本来の負担は合計約43万円(+復興分)。
- ところが源泉で引かれていたのは、その一部にすぎません。足りない所得税が確定申告での追納となり、住民税は源泉ゼロのまま翌年に請求されます。
※これはあくまで仕組みを示すための概算です。実際の額は、常勤の年収・バイトの種類と額・各種控除によって大きく変わります。正確な数字は、末尾のシミュレーターで自分の条件を入れて確認してください。
住民税は「翌年」に遅れてやってくる
もう一つの落とし穴が、住民税のタイムラグです。
確定申告で確定した住民税は、その年ではなく、翌年6月以降に請求が来ます。バイトを頑張った年の“翌年”に、給与天引き(特別徴収)や納付書(普通徴収)で住民税がドンと増えるのです。
「今年は稼いだのに、来年の手取りが減った気がする」——その正体はこの住民税の時間差です。バイト収入を計画するときは、翌年の住民税増まで織り込んでおくのが安全です。
では、自分はいくら追納/還付になるのか?
仕組みが分かっても、実額は人によってまったく違います。常勤の年収、バイトの種類(給与か報酬か)、その金額、控除の状況で変動するからです。
医師のお金計算室では、常勤+複数のバイトを入力すると、
- 年間の手取り額と、額面からの内訳
- 確定申告での追納/還付の見込み額
- 翌年の住民税の予告
までを一発で算出できる無料ツールを用意しています。
まとめ:追納で慌てないために
- バイトの源泉徴収は“仮の概算”。確定申告で本来の税率に直され、多くの医師に追納が出る。
- 特に報酬扱いの10.21%は低め。限界税率との差が、そのまま追納になる。
- 住民税は翌年に遅れて来る。来年の手取り減も先に織り込んでおく。
- 不安なら、まず実額をツールで把握し、必要なら追納分を先に取り分けておくのが堅実。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断については税理士等の専門家にご相談ください。税制は年度ごとに改正される場合があります。
著者:現役医師 Dr.マコト